第99章 【東峰 旭】U&I
ひろかside
元彼からプロポーズを受けた私は、その日からずっと考えていた。
キラキラ光る指輪。
ずっと憧れていたプロポーズ。
なのに、出てくるのはため息ばかり。
分かっていた。
いつの間にか自分が旭くんに惹かれていったこと。
でも、彼は17歳。
心のどこかで壁を作って、好きにならないようにしていた。
でも、あの日、旭くんが彼に言ってくれた言葉がすごく心に響いて離れなかった。
旭くんには他に好きな人がいる。
あの日の言葉は付き合っているというフリをしていたから言った言葉であって、本当に私を想って言った言葉ではない。
それでも、あそこまで想ってくれる人と一生添い遂げたい。そう思った。
私は周りの友人達の反対を押し切って、彼に指輪を返した。
そして、その足で旭くんの学校まで足を運んだ。
久しぶりに見た旭くんの顔。
また少し大人っぽくなっていた。
そして、旭くんから思いがけない告白を受けた。
私は初めから旭くんに自分の気持ちを伝える気はなかった。
ただ、プロポーズを断ったと伝えたかった。
・・いや、今思えば、心のどこかで少し期待していたのかもしれない。
また私を好きになってくれるかもしれないと。
そんなズルい自分とは対照的に旭くんはまっすぐ気持ちを伝えてくれた。
「旭くん、またチョコメロンパン届けに来てくれる?」
「えっ・・それって・・」
「旭くん、私ね。思わせぶりな事するの嫌いなの」
旭くんみたいに自分の気持ちを素直に伝えることが出来なくて、こんな事を言ってしまう自分。そんな私の言葉に戸惑う旭くんを見て、心がふわっと軽くなる感覚を味わう。
あぁ、自分は大人になってしまったんだな。と、ちょっぴり寂しくなる。そして、力いっぱい私を抱きしめる旭くんの純粋さに心が洗われた。