第99章 【東峰 旭】U&I
「ねぇねぇ。旭くんが好きな子ってどんな子なの?」
お酒が回ったのか、ひろかさんは少し顔が赤くなっていた。
頬杖をついてジッと見つめられ、俺は動揺を隠せなかった。
「・・えっと。まぁ・・ハハ」
「なんだよ~。照れて可愛いな~。青春だね~」
ひろかさんは俺を茶化すように笑い、開いたグラスにビールを注いでいた。
「ひろかさんは、高校時代どんな恋愛したんですか?」
「えっ?私?・・そうだな。1つ上の先輩と付き合ってたんだけど、先輩が進学してからは自然消滅って感じだったなぁ・・。懐かしい!」
「年上の人が・・好きなんですか?」
「うぅ~ん。そう言えば今まで付き合ってきた人みんな年上かも!」
「じゃぁ、昨日の彼も・・?」
「・・まぁ、ね」
そう言って鼻で笑うひろかさんは新しく注いだビールを一気に飲み干した。
年上が好き。突きつけられた現実に俺の背中は丸くなった。
「・・出会った時はただの会社の先輩だったんだけどね」
そう言って元彼との出会いを話し始めたひろかさん。
グラスを少し揺らしながらポツリポツリと言葉を漏らしていった。
彼とは会社の先輩後輩で、いつも優しく仕事のフォローをしてもらっていたと言う。
誰にでも優しくて、誰からも好かれるような人柄に惹かれてひろかさんから告白して恋人同士になったが、職場恋愛だったために周りには内緒で付き合っていたという。
「今思えば・・それがダメだったのかもね」
そう言ってひろかさんは寂しそうに笑い、そろそろ行こうと席を立った。
店の外に出ると少しムッとした湿度の高い空気が襲ってくる。
ご馳走様でしたとお礼を言うと、いえいえとひろかさんは笑って先を歩き始めた。その後ろ姿がすごく儚く、今すぐ抱きしめたいという衝動をグッと堪えた。
すぐにひろかさんの後を追って、何度か断られたが俺は食事のお礼も兼ねて家まで送らせてもらうことにした。