第99章 【東峰 旭】U&I
「ここでいい?」
ひろかさんが連れて行ってくれたお店は、ひろかさんのイメージとはちょっと違う、少し古めかしい定食屋さんだった。
中に入ると中高年のおじさん達が多く、椅子は少しクッション部分が剥がれていたり、壁に貼られている手書きのメニューの何枚かが色あせていたりした。
「ここね、あまりキレイじゃないけど味はいいから!」
ニッと笑って慣れたように店内に入り、店員さんに挨拶をするひろかさんの後を慌てて追いかけた。
「ひろかちゃん!いらっしゃい!」
席について早々に店の奥から店主さんらしき人がビール瓶を持ってやってきた。
ゴトンとビール瓶をテーブルに置くと慌ててひろかさんは口を開いた。
「おじさん!今日は飲まないから!!」
「何でだ?もう仕事終わったんだろ?いつもは一番にビールを頼むべ?」
「そっ・・そうだけど・・」
困ったように俺に承諾を得るような表情を見せるひろかさん。
俺が笑って頷くと、ひろかさんは少し嬉しそうに笑った。