第97章 【京谷 賢太郎】それはきっと空のせい
翌日の朝になってもイライラが収まらず、俺は朝から屋上に上がった。
空は雲一つなくて、少し肌寒い風が吹く。
キーっという扉を開ける音が鳴り、身体を起こして振り返ると佐藤がこっちに向かってきていた。
「ねぇ、京谷。これ食べない?」
そう言って俺にハミチキを渡した。
今日はイライラしてて、朝ごはんを買ってくるのを忘れたので素直にそれを受け取った。
佐藤は俺の横に座り、じっと見つめてきた。
「っんだよ!!」
そう睨み付けると、佐藤がふふふ、と笑った。
「京谷、ありがとね?」
「あ゛?・・何のことだよ」
「・・うぅーん、ハミチキ食べてくれて?」
そう言ってまた佐藤はふふふ、と笑った。
さっきまでモヤモヤしていた気持ちはサーっと溶けて言って、雲一つない空の様に心が軽くなった。
チャイムがなってもお互い腰を上げることなく屋上にいた。
しばらくすると佐藤のスマホが鳴る。おそらく友達からの連絡だろう。心配して連絡が来るのは友達が多い佐藤だからだろう。
「戻らなくていーのか?」
「京谷は?」
「俺はサボる」
モヤモヤが晴れて気分が良かったので、しばらくここに居たいと思った。
きっと気持ちが晴れたのは今日の空がキレイだったからだ。
「じゃぁ、私もサボる。いい?」
決して、佐藤が笑ったからではない。
空がキレイだったからだ。
「…勝手にしろ」
それからずっと会話はない。
けど、凄く居心地が良くて今にも眠ってしまいそうだった。
ふと横にいる佐藤を見ると、佐藤も気持ち良さそうに目を閉じていた。
少し強い風が吹けば、佐藤から甘ったるい匂いが流れてくる。
その匂いを鼻に通していると、佐藤がこっちを向いた。
「っんだよ。見んな!」
「ふふ。ごめん、ごめん」
そう言って佐藤は笑った。
昨日はあんなに泣いていたのに、今は嬉しそうに笑っている。
訳の分からない奴。
けど、泣かれるよりはマシだ。
TheEnd