第97章 【京谷 賢太郎】それはきっと空のせい
「お疲れ様でした!」
部活が終わって部室で着替えをしていると、向こう側で少し騒がしくなった。
「何~。矢巾彼女出来たの!?誰!?どんな子?」
「ちょっ、花巻さん!声大きいですよ!!」
矢巾が先輩達に囲まれながらデレデレ笑う矢巾を見て舌打ちをした。
「もしかして、佐藤か?お前1年の時からよく一緒にいるもんな?」
「岩泉さん!なんでひろかのこと知ってんですか?」
「2年の時、実行委員で一緒になった。そん時、京谷も一緒だったよな?」
岩泉さんがこっちに声をかけてきたので、ウスとだけ答えた。
「あぁ、あの子か!明るくて可愛い子!」
「ちっ、違います!ひろかは友達です!彼女はひろかの親友の方です!」
「確か、一緒にいる子も大人しそうだけど、可愛かったような・・」
「そうなんスか?松川さん」
「うん。俺結構タイプ」
「ちょっと!松川さんやめてくださいよ!俺の彼女ですから!!」
部室がかなり騒がしくなって、俺は仕度を終わらせてその場を去ろうとした。
「じゃぁ、俺はもう一人の子狙っちゃおうかな~!ひろかちゃんだっけ?」
佐藤の名前に俺も反応して顔を上げると、矢巾が勢いよく声を上げた。
「ダメです!ひろかは絶対ダメです!!」
「はぁ?なんで~?」
「花巻さん、絶対女泣かせじゃないですか!俺・・ひろかの笑顔が好きなんですよ。だから、あいつにはずっと笑っていて欲しいって言うか・・。だから花巻さんは絶対ダメです!!」
矢巾の言葉を聞いて、俺の中の何かがプツンと切れた。
気づいた時には矢巾を殴っていて、俺は岩泉さん達に取り押さえられた。
何がずっと笑っていて欲しいだ。
あいつが・・佐藤が泣く時はいつもお前が原因なんだよ。
お前の事でしか泣かねーんだよ。
俺は岩泉さん達を振り払って部室を出た。
帰りにハミチキを買った。アツアツだったのに、あの日笑っている佐藤の隣で食べた冷めきったハミチキより不味く感じる。
「・・・ちっ」
イライラする。
何もかもがイライラする。