第12章 【澤村 大地】私の彼はBグループ?
あれは入学してすぐのこと。
「あれ?…佐藤?」
声がする方を見ると、澤村くんが立っていた。
「ちょっと先生に頼まれ事されちゃって」
澤村くんは、そっか。と言って、
私の隣に座った。
「これをホッチキスで止めればいいんだよな?」
そう言ってプリント用紙を手に取った。
「そんな!いいよ!澤村くん部活後で疲れてるのに!」
焦って断った私の顔を見て、
吹き出して笑いながら澤村くんは言った。
「…っぶ!……まぁ、手伝わせてよ!な?」
そんな風に言われて断れる訳もなくて、
私は澤村くんと作業に取り掛かった。
「へぇー、佐藤は一人っ子なんだ」
「うん。しかも両親が出張ばっかり」
ちゃんと話すのはこの日が初めてで、
お互いの話をし合った。
「これでおしまいっ!」
最後の一冊を仕上げ、私たちはお疲れ。と笑いあった。
「失礼します」
職員室の先生の所に冊子を提出して私たちは教室へ戻り、
駅まで一緒に帰ることになった。
澤村くんとの時間は楽しくて、駅までの時間が一瞬に感じた。
「佐藤はさ…なんて言うか、もっとダメな所見せてもいいと思うぞ?」
「えっ?」
「小さいころから、ご両親がいないことが多かったみたいだし、
自分で何でもやらなきゃいけなかっただろうから、
周りの奴らよりもずっと早く、
大人にならざるを得なかったんだと思う」
「…けどさ、たまにはしっかり者の看板を下ろしてもいいと思うぞ?」
今までそんなこと言われた経験がないから、
びっくりして何も言えなかった。
「まぁ、佐藤の事だから、
そんな簡単にしっかり者から抜け出せないとは思うけど」
そう言って澤村くんは笑った。
「だからさ、俺で良ければだけど
休憩したい時はいつでも言えよ?」
喉の奥がきゅーっとなって
油断したら涙が出そうだった。
「それに、今日一緒にいて、
結構トボけてるし、すぐテンパるし、
本当の佐藤は俺にバレてるしな!
俺はそっちの佐藤の方が好きだぞ」
ちょっと意地悪な顔で澤村くんは笑った。