第95章 【矢巾/京谷】ほっとけない友人達
私は涙を拭って教室へ走った。
教室に入ると、私の席の前で矢巾と理香が心配そうな顔をしていた。
「あっ!ひろか来た!心配したんだよ」
「お前、目腫れてんぞ?どーした?」
「ちょっ!矢巾!!女の子には色々あるんだよ!親友の私が話聞くからどっか行ってて!」
「はぁ?俺の方がこいつの長い付き合いなんだから、俺の方がお前より親友だっつーの!」
私の前で喧嘩を始めた2人。
私はなんだか面白く吹き出してしまった。
「あっ、笑った」
「よかったー。やっぱ、ひろかは笑った顔が一番可愛い!!」
「もう・・昨日ちょっと感動モノの映画深夜まで観てて寝坊しただけ!」
いつもと変わらない二人に私はホッとしてまた涙が出そうになった。
「おはよー」
翌日教室に行くと、矢巾の口元に傷があった。
「どっ、どーしたの?」
「いや、なんか昨日京谷に殴られた」
「京谷・・が?」
私はハッとして、急いでカバンを持ったまま屋上へ向かった。
そこにはやっぱり京谷がいた。
「ねぇ、京谷。これ食べない?」
私は朝買ったハミチキを京谷に渡した。
京谷は何も言わずに受け取って、私は京谷の横に座り、じっと見つめていると、なんだよ!と睨まれた。
「京谷、ありがとね?」
「あ゛?・・何のことだよ」
「・・うぅーん、ハミチキ食べてくれて?」
ふふと私が笑うと、京谷は舌打ちをして、またハミチキを口に含んだ。
チャイムが鳴っても私達はずっと屋上にいた。
戻ってこない私を心配して理香から連絡が来た。
「戻らなくていーのか?」
「京谷は?」
「俺はサボる」
「じゃぁ、私もサボる。いい?」
「…勝手にしろ」
今日は天気が良くて、風も気持ちよかった。
私達は仰向けになって、大きく広がる空を眺めた。
この世界に2人だけのような錯覚に陥る。
会話はないけど、凄く居心地がいい。
もし、矢巾と理香の2人の時間が増えても、私は私の時間を増やせばいいんだ。
そう思うと昨日まで悩んでいたことが嘘のように晴れていった。
ふと横を見ると、京谷と目が合った。
「っんだよ。見んな!」
「ふふ。ごめん、ごめん」
私はまた空を見て笑った。
TheEnd