第11章 【澤村 大地】彼は天然魔性
「じゃぁ、解散!」
バスで学校まで戻った。今日は部活もお休みになる。
各自大きな荷物を持って、学校を出る。
私は一度教室に戻って、自分の席に座った。
窓から夕日がきれいに差し込んで、ちょっぴりセンチメンタルな気分になる。
ガラガラ
教室のドアが開く音がした。
「・・・佐藤?」
そこには澤村くんの姿があった。
「澤村くん…どうしてここに?」
「いや…ちょっと」
そう言って、澤村くんは私の席の前まで来た。
「ここいいか?」
私が頷くとゆっくりと前の席に腰掛けた。
始めは少しぎこちなかったけど、
少しずつ、そんな空気もなくなっていった。
「澤村くんって、手大きいんだね」
そうか?とまじまじ自分の手を見ていた。
澤村くんの大きくてごつごつした手がすごく男の子らしくてドキドキした。
「・・・よかった。佐藤がいつもに戻った」
そう言って、その手を私の頭の上に乗せた。
「なんかあったら、なんでも言えよ?」
眉を下げて笑う澤村くんの顔を見ていると
色んな感情がこみ上げてきた。
「・・・いやだよ…」
「え?」
「澤村くんの手、他の子に触れちゃやだよ…」
ぽろぽろ流れる涙を止めることが出来なかった。
澤村くんはそっと手を離し、慌てた様子で口を開いた。
「佐藤、ごめん。俺、その、なんか佐藤が嫌がる事したか?」
慌てふためく澤村くんを見ていると、なんか笑いが込み上げてきた。
泣いていたかと思えば、
急に笑い始めた私の様子にさらに困った顔を見せた。
そして、顔を上げた私の頬に手を当てて、
涙を拭ってくれた。
「…天然魔性」
「へ?」
「頭ぽんぽんしたり、涙を手で拭ったり。
そういうのは好きな子にだけしかしちゃだめなんだぞ」
私はそっと、澤村くんの手を振り払った。
すると、その手を再び私の頭の上でぽんぽんと上下させた。
「じゃぁ、これからは佐藤だけにしとく。
好きな子にはしてもいいんだよな?」
そんなことを言われて、涙が出ないわけがない。
頭の上に置いてあった手を頬に移動させて、
ゆっくり親指で拭ってくれた。
そして、澤村くんの大きな手に包まれた頬を
引き寄せられ、私たちは唇を重ね合わせた。
The End