第87章 【孤爪 研磨】口約束をちょうだい
最寄駅について、家までの道を歩く。
研磨は相変わらずスマホをいじっていて、私の家の前まで来てやっと顔を上げた。
「ひろか、・・・・・よう?」
「えっ!?」
・・・よう?
まさか別れよう?って言ったの?
そう言えば前に雑誌で結婚結婚!という女は重たくてフラれるって書いてあったのを見たことがある。
そんなの絶対いやだ。
喉の奥がぎゅっと苦しくなって、今にも涙が出そうになる。
研磨は私から視線を逸らして、口を開いた。
「えっと・・だから・・、結婚式は海外で2人だけでしよう?」
「・・・結婚式?」
そう。と研磨は頷いてスマホの画面を私に向けた。
「ひろかは今日みたいなのがいいのかもしれないけど、俺はあんな大勢に見られるの絶対いや。目立つのやだ。だから2人だけでやりたい」
差し出された研磨のスマホ画面には海外ウエディングの写真が写っていた。
「まさか、神社からずっとこれを調べてたの?」
「えっ・・うん」
顔を赤くして、そっぽを向く研磨。
嬉しい。
研磨も私との未来をちゃんと考えてくれていたんだ。
「研磨と結婚式挙げられるなら何でもいい!!」
私は研磨に抱きついて、研磨の肩に顔を埋めた。
「ちょっ、ひろか、痛い・・」
「へへへ~」
少しだけ私よりも背の高い研磨。当日は低いヒールを履くね?
「あっ・・ひろか、ごめん。やっぱ無理かも」
「えっ?」
「クロが呼んでもいないのに来そうだから二人っきりは無理かも」
確かに。そう言って私は笑い、研磨はため息をついた。
ねぇ、研磨。
私達はまだ高校生。
これから大学に行って社会に出るなら5年後。
社会に出てすぐに結婚っていう事にはならないのなら、もっともっと先の話。
それでもね、研磨とのこの口約束で私はこれからも頑張っていける気がするんだ。
「研磨、大好きだよ!」
「えっ・・あ、うん。・・俺も・・好き」
「ねぇ、寒いからうちに寄って行かない?」
「うん」
いつか、同じ家に一緒に帰ろうね、研磨。
TheEnd