第87章 【孤爪 研磨】口約束をちょうだい
「わぁ・・キレイ・・・」
私は今、研磨と一緒に明治神宮にいる。
三が日は混むから行きたくないと断られたので、1月も半ばに差し掛かった今日私達は初詣に来ていたのだ。
参拝を終えて、帰ろうとしていた私たちの前に赤い和傘を差された花嫁さん。後ろには親族であろう人たちが列を作って歩いていた。
海外からの観光客らしき人達は、和装の花嫁さんが珍しいのか写真を撮っている。
見知らぬ人たちからも拍手やおめでとうの言葉をもらい、その花嫁さんはにっこり笑っていてとても綺麗だった。
「ねぇねぇ、研磨!すごく素敵だったね!結婚って素敵だね!…ね?」
私がテンション高く研磨に問うと、研磨は眉間にしわを寄せた。
「えっ・・絶対いや」
そう言って、研磨はスマホ片手にどんどん前へ進んで行った。
絶対いや?
私と結婚するのがいやってこと?
そもそも結婚するのがいやってこと?
ねぇ、研磨。
私達の未来に結婚は無いの?
「・・ひろか?帰らないの?」
私が先を行く研磨に追いつくと、研磨はまたスマホを見ながら歩き始める。
研磨が好き。
これからもずっと一緒にいたい。
けど、研磨はそう思っていないのかな。
ただの紙切れって言うのかもしれないけど、
私にとっては大事な紙切れなんだよ。
研磨と同じ苗字になって、いつかは研磨との子供を産みたい。
おじいちゃん、おばあちゃんになっても手を繋いで散歩をしたい。
ねぇ、研磨・・。私達の未来を研磨はどんな風に描いているの?