第86章 【月島 蛍】手のひら一つ分の距離
「僕も好きだけど?」
「・・・えっ!?」
私が顔をあげると、そこにはすでにメガネをかけている月島くんがいた。
「メガネかけてたの!?盗み見なんてひどい!」
「いや、別にかけるなって言われてたわけじゃないデショ」
最悪だ。
見られていないと思っていたのに。
顔から火が出そう。
私が俯いていると、カタンと月島くんがメガネを外して机の上に置いた。
「これで見えないよ?見ないであげるからさ、今度はちゃんと声に出してよ?」
頬杖をついて、楽しそうに笑う月島くん。
もう、私はヤケになってしまう。
「月島くんのことが好きです!大好きですっ!」
告白を終え俯く私の頬を両手で包み込み、月島くんはグッと顔を近づけてきた。
「…っぷ。すごい顔。真っ赤だけど?」
「この距離なら見えるの?」
「まぁね」
月島くんと私の顔の距離は手のひら一つ分。
月島くんのいつもはメガネの奥に秘められた瞳に吸い込まれてしまいそうになる。
私はゆっくりと目を瞑って、口を動かした。
“ねぇ、キスして?”
TheEnd