第85章 【澤村 大地】あの頃の幸せ
SNSを通して、今年の年末に中学時代の同窓会が行われることを知った。
中学2年の冬に転校した私はなんとなく行きづらい気持ちがあったのだが、コメント欄に名指しで呼びかけがあったことが嬉しくて参加を決意した。
久しぶりに帰る仙台。
町並みはかなり変わっていて、ちょっぴり寂しい気持ちになる。
指定されたお店に向かう途中、背後から声を掛けられた。
「もしかして…佐藤?」
「・・・池尻!?」
おぉ!久しぶり!と右手を挙げた彼は昔の面影はあるものの、すっかり大人の男の人になっていて、スーツがとっても似合っていた。
「へぇ。今は名古屋にいるのか」
「仕事の関係でね。池尻は地元でしょ?何の仕事してるの?」
私達は一足先に近況を報告しながらお店に向かった。
池尻とは中学時一番仲が良かった男の子で、悩みや相談なんかもしてもらっていた。
お店に入れば懐かしい顔ぶれで、意外と名前と顔が一致するものだ。
私は早速女性陣が多く集まる所に連れて行かれ、池尻は男性陣の方へ向かって行った。
この年になれば、結婚して子供がいる子だって多い。
子供の話や仕事の話から始まり、中学時代の思い出話はとてつもない盛り上がりを見せた。怖かった先生の話や、あだ名とか、当時好きだった人の暴露話まで。話は尽きなくて久しぶりにお腹を抱えて笑った。
「佐藤っ!」
私への質問攻撃が終わった頃、池尻が私の元にやってきてそっと耳打ちをした。
「澤村、来てるぞ?」
私が池尻が指差す方を見ると、そこには熱燗を飲んでいる澤村がいた。
ううん。本当はお店に入った瞬間に彼を探していた。けど、私は今気付いたかのように、本当だ。と何事もないかのように振る舞った。
しかし、池尻には誤魔化せないようで…。
「いいから行って来いよ?ってか、行くぞ?」
池尻はそう言って私の手を取った。