第83章 【黒尾 鉄朗】素敵な靴を探しに行こう
部屋に入ると、無駄にピンクの照明。いつの時代だよ。と大人びたことを言い放った。別にその時代に使用したことなんてない。
彼女をベッドの上に寝かせると、ごろんと寝返ってうつ伏せになった。
ワンピースから見える脚に少しドキッとしてしまったけど、そのよりもカカトから血が出ていることに驚いてしまう。
「もしかして、靴擦れで歩けなかったのか?」
「・・・無理してあんなハイヒール履くからだよね~」
そう言ってバタバタと両足をベッドに何度も叩きつけていた。
枕に顔を埋めて、ぎゅっとシーツを握る。バタバタと鳴る音で誤魔化しているつもりだろうけど、枕からはぐすん、ぐすん。と鼻をすする音が聞こえる。
俺はベッドに腰を掛けて、彼女の頭を撫でてやった。
次第にバタバタさせていた足が止まって、うっ、うっ…という声を聞かせながら彼女は素直に泣いた。
キレイに巻かれた髪の毛と大人びたワンピースにハイヒール。
左手には大きなダイヤモンドが光る指輪がはめられていた。
「婚約指輪・・・?」
訳ありか。
とんでもないモノを拾ってしまったな。と自分の性格に少し呆れながらも、泣き疲れて眠ってしまった彼女を眺める。
明日は学校も部活も休みだ。
親には友達のところに泊まると言ってある。
朝まで彼女の傍にいて、彼女の目が覚めたら今度はヒールの無い素敵な靴を買いに行こう。
俺もそろそろ靴を新調しよう。
そして素敵な靴を履いて2人で素敵な所へ行こう。
もしそれが許されるのなら。
TheEnd