第81章 【澤村 大地】恋みくじ
おみくじの前はとても混雑していたので、私たちは神社を後にした。
「ねぇ、これからどうするの?」
「あぁ・・飯でも食いに行くべ?」
「賛成!!」
そんな話を友人と菅原が私達の前で話し合っていた。
私はこっそり隣にいる澤村を見た。
新年早々、澤村に会えるなんて幸せ。
私はずっと彼に恋をしていたのだから。
「佐藤はさ、何をお願いしたわけ?」
「へっ?」
「いや、参拝したんだろ?」
眉を下げて笑う彼の顔がとっても大好きで、心臓がドクンと動いたのが分かる。
「さっ・・澤村は?」
「俺か?まぁ、受験のことと・・・」
「ん?」
「・・バレー部のことかな」
そう言って照れくさそうに頬を掻く彼。
この人はどれだけ私の心を奪えば気が済むんだろう。
「私も・・受験かな」
嘘。本当は受験のことそっちのけで、澤村と付き合えますように。もしくは、恋みくじでレアな縁起物が出ますように。と図々しく願ってしまった。
「そう言えば、おみくじどうだったんだ?」
「あっ・・・」
すっかり恋みくじを開けるのを忘れていた。
「佐藤らしいな!」
そう言ってハハっと笑う。
私らしい…か。少しは私のこと見ててくれてたのかな。なんて期待しちゃうじゃん。バカ。
「あっ、そう言えばメールありがとな」
「あっ、うん。お誕生日おめでとう!」
「ありがと。毎年佐藤から一番初めにメール届くよ」
「えっ!?本当?嬉しいな。だって、23時半くらいからずっと待機してるもん」
そうなのか?とちょっと困った顔。ふふ。可愛い。
「佐藤は進路、たしか東京だったよな?」
「うん。澤村もだよね?」
「そう。スガは地元の大学だし、佐藤が東京だと心強いな」
自炊とか出来るかな…と頭を抱えてる彼を見て、また心臓がバクバクする。澤村はいつもさらっとすごい事を言ってくる。澤村的には特に深い意味なんて無いんだろうけど、恋をしている身としては身体が持たない。
私はこっそり、さっきの恋みくじを開けた。