第81章 【澤村 大地】恋みくじ
「ひろか~!早く早く~~」
私は友人に急かされて、女の子達が群がっている場所へ向かう。
小さな木箱の周りに大勢の女の子。
「ここだっ!恋みくじ~!!」
地元の神社。
初詣は毎年ここで恋みくじを引くのが、地元の女の子にとって大イベント。
普段からある恋みくじとは違って、中には小さい金色の縁起物が入っている。その縁起物の中にはレアな物があって、そのレアな縁起物が入っていたおみくじを引くと、必ず恋が成就するという・・・まぁ、都市伝説的なものだ。
私は焦る気持ちを抑え、順々に前に進んでいく。
お財布を出して300円を箱の中に入れ、一度手を合わせて願うように恋みくじを引く。
「ひろか、どうだった?」
友人が私を囲む。
「そっちこそ、どうなのよ?」
お互い目を合わせて笑う。
開けるのが怖い。もし、大凶なんて出た日には立ち直れない。
新年早々落ち込みたくもない。
はぁ・・・と大きく息を吐いた。
「いっ・・・いくよ?・・・せーーっのっ・・」
「あれ?佐藤?」
おみくじを開けようとする手が止まって後ろを振り返ると、そこには澤村が手を振っていた。
「なになに~?みくじ?どうだった??」
菅原が澤村の陰からヒョコッと顔を出した。
「私達が引いたのは恋みくじだよ!!」
そう言って友人はまだ未開封の恋みくじを見せびらかしていた。
「そう言えば旭が言ってたな、ここの恋みくじが人気だって」
「あっ、そう言えば東峰いないね?」
いつも3人セットなイメージ。私はキョロキョロと周りを見渡すけど、彼の姿はなかった。
「旭はバイト~。この神社で2日間だけバイトしてんだよ」
裏方らしいから会えなかったけど。と菅原は笑った。