第79章 【縁下 力】あの頃描いた未来
ぽとんと私の手に落とされたキーホルダー。
「・・・鍵?」
サンタクロースのキーホルダーの先には何かの鍵がついていた。
「就職が決まって、もう研修とかも始まってるから会社の近くに引っ越した」
「おっ、おめでとう・・・」
私はそのまま鍵のついたキーホルダーを眺めていた。
「なんだよ…。ひろかが言ったんだろ?就職と同時に結婚したいって」
私は勢いよく力を見上げると、あの日、二人の将来を想像して話す私を見ていた、優しい力の笑顔があった。
「えっ・・・だって。力・・・彼女は?」
少し困った顔で力は笑った。
「だって、あの日別れようって言ったのに・・・」
「それはひろかが勝手に言っただけでしょ?俺はあの時別れるなんて言ってないし。それとも、ひろかはこっちで彼氏作ったわけ?」
「作ってない!ずっといない!!」
私の返答にハハっと笑う顔。あの頃と全然変わらない。
「ご両親に住所聞いて尋ねたんだけど家にいないし、見つけるの大変だったんだぞ。折角アメリカのクリスマス堪能しようと思ったのに…」
そう言って私の頭をコツンと叩いた。
「ごめん・・なさい」
私はギュッと手のひらにある力の新しい部屋の合鍵を握った。
「卒業したら日本に帰って来るんだろ?・・・ってか帰って来いよ?」
「・・・力がそんなこと言うの珍しいね」
力はうるさいな。と拗ねながら私を抱き寄せた。
「ひろかの卒業が6月?で、こっちに帰ってきて、お盆休みに親に挨拶もあるだろうし、籍を入れるのは早くても来年の冬あたりだな」
それでいい?と力が首を傾げた。
「力・・・」
私は思いっきり力の胸に顔を埋めた。
その瞬間、時計の針は24時を指し、ツリーの光が消えた。
街は真っ暗になって、力の顔しか見えない。
「あっ・・・誕生日おめでとう」
「あっ、そういうことか。ありがとう」
私達はブッと吹き出した。
「本当、グダグダ」
「ふふふ。…だね」
私達は抱き合ったまま顔を見合わせた。
「誕生日プレゼントは?」
「・・・私?」
「手抜きだな」
私は舌を出して笑った。
「じゃぁ、誕生日プレゼントありがたく頂くよ。帰るよ、もう寒いから」
私達は手を取り合って、歩き出した。