第78章 【烏養 繋心】Flavor
「おぅ!こっちこっち!」
今日は同僚に誘われて合コンに来ていた。
本当は宮城の男なんて興味なかったけど、三代目の御曹司って聞いたので私は食いついた。
「こんばんは~!あっ、この子同じ会社の同僚の佐藤ひろかちゃんです!」
私は得意の営業スマイルで同僚の陰から顔を出して挨拶をした。
「初めまして。佐藤ひろかと申しま・・・」
一礼をして顔を上げるとそこにいたのは、かなり明るい髪のガタイのいい男とセンター分けのメガネ、極めつけには・・・金髪にカチューシャ。
なにこれ。
信じられない。
「まぁ、座んなよ!」
私はとりあえず靴を脱いで小あがり席に座った。
そして、上着を脱ぐふりをしながら同僚に耳打ちをした。
「ちょっと、どういうこと?三代目の御曹司じゃないの!?」
「ん?三代目だよ?」
彼女が言う三代目の意味を私はその後の自己紹介で理解した。
「滝ノ上です。滝ノ上電器店で働いてます!26歳です」
よろしくっ!と笑って、隣の男性を見た。
「俺は嶋田。嶋田誠です。嶋田マートで勤務してます!同じく26歳です」
次は繋心な?と最後の人に振った。
「あぁ、烏養です。仕事は坂ノ下商店で店番。26歳」
どうも。と私たちの方をちらっと見ただけで視線を逸らした。
三代目。その肩書きに惹かれて来たけれど、私が想像していたのとは違う。
違うでしょ。分かるでしょ?
そう言う事じゃないでしょ!!!!!
もっとこうさ、そうだな。あの有名なマンガの「花よ○男子」に出てくるF4みたいなさ!そういう御曹司が来るんだと。
冷静に考えればそんなわけないって分かるのに…。
昨日見た友人のSNSのせいで私は焦っていたのかもしれない。
最悪だ。
ハズレ合コンの時は、とりあえず飲み。食べ。飲む。
ここで元を取らないと。
そう思って一気にビールジョッキを空けた。
自己紹介も乾杯も終わって話が始まると、私の知らない地名が飛び交う。
「あぁこの子、東京生まれ、東京育ちで、最近こっちに来たばっかりなの!」
同僚がそう言うと、男性陣が一気に食いついてきた。
「東京か!都会っ子だな!」
「通りであか抜けてるわけだわ!」
なぁ、繋心?と嶋田さんが金髪カチューシャに話を振った。
繋心と呼ばれる彼はチラっと私を見てから、そうだな。と言った。