第70章 【菅原 孝支】今日俺は友達を失う。
「私、鍵返してくるね」
「あっ、俺も職員室用事あるから一緒に行くわ」
大地達と別れて、佐藤と二人になった。
屋上に行けたからなのか、上機嫌に鼻歌を歌う佐藤を見ていると、自然と笑顔になる。
「まさか、理香が恋してるなんてね」
「しかも、繋心さんって…」
俺たちはさっきの突然の告白を思い出して吹きだした。
「でもさ、いいよね。恋するって」
「・・・そうだな」
「でもさ・・・」
急に佐藤が足を止めて、ばつが悪そうな顔をした。
「菅原に彼女が出来たら…ちょっとイヤだな」
「えっ・・・」
俺も足を止めて佐藤を見ると、ごめんごめん。といつもの顔に戻った。
「彼女が出来たらこうやって4人で集まること難しくなっちゃうじゃん?なーんて、わがまま言ってみた!」
そう言って佐藤はまた歩き出す。
彼女の小さな背中を抱きしめたい。
帰りだって家まで送りたいし、プリクラだって2人で撮りたいんだ。ハイタッチじゃなくて恋人繋ぎをしたいし、屋上で好きだって叫びたい。お揃いのストラップもいいけど、お揃いの指輪をつけたいんだ。
いつになったら、友達から抜け出せる?
そろそろ俺のこと、男として見てくれない?
そんなことを言ったら、今のままの友達には戻れない。
それでも、もうこの気持ちを留めておくことが出来ないんだ。
「佐藤!俺さ・・・」
今日俺は友達を失う。
TheEnd