第69章 【月島 蛍】君の涙があまりにも美しくて僕の心は黒く染まった。
無事、クリスマスパーティーも終わって、僕たちは寄り道をしながら帰った。街はクリスマスツリーが飾られていて、カップルたちが楽しそうに歩いていた。
他の人から見れば僕たちも恋人同士に見えるのか。そんなことを思いながら彼女用に買ったプレゼントをぎゅっと握った。
「月島くん、見てみて!!ツリー!おっきいね~!」
はしゃいでツリーの方へ駆け寄った彼女。
子供だな、なんて少し笑って彼女の後について行こうとすると、ピタッと彼女が止まった。
「・・なに?どうかした?」
彼女の視線の先に目をやると、そこには同級生らしき人と手を繋いでいる澤村キャプテンがいた。
僕は彼女の手を引いて、ズカズカと人ごみをかき分けてその場を離れた。どれくらい歩いただろうか。もう辺りは人がほとんどいない所まで来ていた。
近くに公園があったので、ベンチに二人で腰掛けた。
絶対に泣いていると思ったのに、ひろかは泣いていなくて、僕の隣にちょんと座っている。
「寒いね…」
始めに口を開いたのはひろかだった。
「そんな恰好してるからでしょ」
「そうだよね。もう冬だもんね」
足をパタパタさせながら、冬の夜空を見上げていた。
僕はカバンから彼女用に買ったプレゼントのマフラーを出し、彼女の首に巻いた。
「クリスマスプレゼント」
「えっ・・でも私何も用意して…」
「いいから。黙ってもらってよね」
彼女はマフラーに顔をうずめて、うん。と言った。
僕がひろかの手を握ると、彼女も握り返してくる。
「ねぇ、月島くん」
「なに?」
「私、月島くんのこと…好きだよ?」
ひろかはまた冬の夜空を見ていた。
「じゃぁ、なんで泣いてるのさ」
「・・・わかんない」
月の光に照らされた彼女の涙がとても美しかった。
でも、その涙は僕に向けられた涙じゃない。
けど、彼女の心を支配しているオレンジ色に僕の黄緑色を混ぜ合わせて、黄土色になって、どんどんどんどん黒に近づけていったら、いつか僕たちは交わることが出来るのかな。
君の美しい涙は僕の心を黒く染めていく。
TheEnd