第69章 【月島 蛍】君の涙があまりにも美しくて僕の心は黒く染まった。
「ありがとうございましたっ!」
3年生にとって最後の試合。
客席に向かってお辞儀をする。
顔をあげると客席から見ていた君が崩れ落ちて泣いていた。
試合に負けたのは悔しかったし、
これで3年生が引退かと思うと、僕だってそれなりにショックだ。
それよりも・・・
「ひろか。集合だって」
僕は彼女がいた客席に向かう。
マネージャーは1人しかベンチ入り出来ないので、彼女だけがいつも客席から試合を見ていた。
客席の床に座り込んでわんわんと泣いている彼女を見ると、こっちまで喉の奥を締め付けられる。小さくうずくまって泣く君はいつもよりも、もっともっと小さくて、今にも消えてしまいそうだ。
僕は彼女の横に座り込んで、背中を擦った。
何度も見てきた彼女の涙。
でも、今日の涙は今までのとは違うんだ。
もちろん、試合に負けたことが悔しくて泣いているんだろうけど、それ以外にも理由があるんでしょ?
「月島く・・・ん。ごめん、ごめん…なさい」
選手の方が辛いはずなのに…と必死に涙を止めようとする彼女を僕の腕の中に収めた。
そんなに泣くとブスになるよ。
それくらいのこと言えたはずなのに、喉の奥でつっかえて何も言葉が出てこない。