第1章 【孤爪研磨】特権
あれから2年が経った。
ピピピピ…
カーテンの隙間から指す日差しがとても眩しくて、布団を頭の上まで被せて光を遮る。
携帯の目覚ましアラームを消して10分経つ頃に、聞き慣れた足音がするんだ。
「おはよう、けーんま。」
この彼女の笑顔は間違えなくおれだけに向けられたものだから、これからもずっと彼女とクロの関係に気づかないフリをするんだ。
「けーんま?早く行こう?」
わざとに寝坊して、
わざと遅れて歩く。
彼女にとって、ほっとけない弟だったとしても、
それがおれに与えられた特権だから。
The End