第58章 【山口 忠】みにくいアヒルの子
「俺も、そばかすとか三白目とか、ヒョロヒョロした身体とか・・・ずっとコンプレックスだった」
俺はそっと自分のそばかすを触った。
「私ね、みにくいアヒルの子は魔法で白鳥になったんだってママに言われたことあるの」
「まっ、魔法?」
「そう。ママは私のこの髪の毛が好き。可愛い。美しい。そう言って育ててくれたの。醜い私の髪の毛に魔法をかけてくれたんだ」
なーんちゃって。と舌をだして笑って見せる彼女はとても美しかった。
「自分のコンプレックスってさ、もちろん周りからの指摘とかで気づくものかもしてないけど、コンプレックスをこじらせるのって結局自分なんだよね」
すっと佐藤さんの片手が俺の頬を掴んだ。
「山口の三白眼、私は魅力的だって思うよ?」
「えっ・・やめてよ」
「どうして?マリリンモンローと同じだよ?」
ジッと俺の目を見つめる佐藤さんから俺は目を逸らす。
「赤毛のアンってね、コンプレックスだった自分の容姿を、自分は美少女だって思うようにしていたんだって。だからあんなに強くカッコイイ生き様なのかな、なんて思うんだ」
そう言って、佐藤さんはそっと俺のそばかすに触れた。
「人間は外見じゃないってよく言うけど、私はそうは思わない。だって第一印象なんて大体外見で、その第一印象でイメージが決まるでしょ?少なからず外見は大事なのよ」
でもね。と口を開いて、そばかすを触っていた手を自分の髪の毛の巻きつけた。
「それを自分のチャームポイントだって自信を持っている人だったら、それは個性となって羨ましいとまで思ってしまう事ない?」
「確かに・・・」
佐藤さんはクルっと回って、人差し指を立てた。
「私が山口に魔法をかけてあげるよ。そして、山口が自分のことを好きになれたら、きっとその時が白鳥になる時だっ!」
彼女はニカっと笑って、席に戻った。
俺たちは途中にしていた日誌に手を付ける。
【今日の総括】
魔法使いになりたい。佐藤
白鳥になりたい。山口
「中二病?」
「だね」.
俺たちはしばらくの間笑いあった。
次の日、担任にふざけるなと怒られて、もう一度日直をさせられた。