第58章 【山口 忠】みにくいアヒルの子
「月島~、これこないだ借りたやつ!ありがとね」
朝練が終わって教室に入ると、一人のクラスメイトがツッキーの元へ駆け寄ってきた。
「どーだった?」
「いい!特に3曲目のベースとか絶妙!」
「分かってるじゃん」
まぁね!とドヤ顔で彼女は笑った。
「あっ、山口おはよ~」
彼女はやっと俺の存在に気づいて声をかけた。
「佐藤さん、おはよう」
俺がペコっと会釈して顔を上げるとすでに彼女の目線はツッキーを見ていた。ツッキーを見上げ、楽しそうに話す佐藤さんの顔を俺は何度も見てきた。
やっぱりツッキーはカッコイイ。
俺は佐藤さんとこんなに長く会話出来ない。
緊張して声をかけることすら出来ない。
ましては、あんな笑顔を見せられたら顔が真っ赤になってしまう。
だって、ずっと君が好きだったから。