第57章 【二口 堅治】Little Red Riding Hood
Little Red Riding Hood
赤ずきんは弱く無防備。
母からの忠告を受けてもそれを守らなかった。
善悪の判断能力や危険察知能力が低く、悪い誘惑にそれとわからずにのってしまう娘。
そんな考察を読んだことがある。
でも、私は違うんじゃないかと思う。
赤いずきんで自身の魅力を表現しオオカミを誘い、
危険だと分かっていて、オオカミに近づく。
オオカミの危険な香りに魅了されて。
でも、そんな危険を冒すのは、近くに狩人がいるから。
いざとなったら助けてもらえる。そう思っていたから。
赤ずきんは打算的な少女なのだ。
決して弱くて無防備な可愛らしい少女ではないのだ。
そして私も彼女と一緒。
化粧ポーチだけではなくカバンごと持って部屋を出た。
危険だと分かっていて、この後二人で抜けようと言ってきた彼を誘ったのだ。
彼の危険な香りに魅了され。
「おぉーーーい!佐藤!どこ行った?」
鎌先が私を探している。
きっと私も二口くんもなかなか戻らないので心配して探しているのだろう。
「狩人が助けに来てくれたみたい…」
私がそう言うと、二口くんは何言ってんの?とまた私にキスをする。
彼の香りは獣臭さではなく、香水のいい香りだったけど、私はすっかりその香りに魅了されているのだ。
あぁ、早くここから逃げなきゃ。
思ってもいないことを心で叫びながら、
私は狩人を待つ。
TheEnd