第7章 【武田 一鉄】悪戯な彼女
「せーんせっ」
聞きなれた声。
僕は恐る恐る振り返る。
そこにはいつも変わらぬ笑顔で駆け寄ってくる彼女の姿があった。
彼女との出会いは僕が教師として烏野高校に勤務が決まり、
1年目にして担任を任されることになった、そのクラスの生徒の一人。
佐藤ひろかさん。
初めての授業。
緊張のあまり、全然うまく授業が出来なく、
生徒達はおしゃべりをしたり、居眠りをしたり、全然話を聞いていない様子だった。
「先生!」
佐藤さんが挙手した。
「今日は初めての授業ですし、先生のこと教えてください」
賛成ー!と生徒達が少しずつ僕の方に意識を向け始めた。
このまま授業を進めても意味がないと思った僕は
彼女の提案をのんだ。
あっという間にクラスにまとまりが出来て、
次からの授業はすごく円滑に出来た。
それからと言うもの、僕は彼女に頭があがらない。