第50章 【澤村 大地】性癖
「ねぇ、大地。大地を嫌いにならせてよ」
そう言うと、彼はちょっと怒った顔で私と天井の間に割り込んでくる。
「俺は、頭の中ではひろかにひどいことしてるぞ?ただ、本当にしたら嫌われるから出来ないだけだ」
「嫌いにならせてよ」
「・・・」
理性が強い所も好き。
いつも私を大切にしてくれる所も好き。
「いいよ。大地、ひどいことして?」
「お前なぁ…、俺の今までの苦労をそんな簡単に…」
私がいいと言っているのにまだストッパーが外れない。
「焦らしプレイですか?そういうのも結構好きです」
また彼が怒った顔をして、こっちを見る。
「好きだよ、大地。好き過ぎるよ…助けて?」
「・・・もう、知らないからな」
「ひろか、大丈夫か?」
ぐったりしている私に彼は心配そうな顔を向け、すまん。と何度も謝る。
「本当だよ、ひどい」
「えっ…その、悪かった」
肩を落とす彼の指に私の指を絡ませ、ぎゅっと手を握った。
「全然嫌いにさせてくれないんだもん。もっと好きにさせるなんて、ひどい」
私がそう言うと、彼は安心したように、眉を下げて言うんだ。
「・・・すまん」
大好きだ。
彼が本当に大好きだ。
大好き過ぎて、どうしようもない。
彼をいつか失う日が来たら、私はどうなってしまうのか。考えただけでもおかしくなる。
だから嫌いになりたい。
嫌いにさせて欲しい。
そうすれば、私は救われるから。
いつか、大地を嫌いになれる日がきたら、
その日が一番彼を好きになる日かもしれない。
TheEnd