第45章 【黒尾 鉄朗】ヒーロー ~約束~
「えっ!?引っ越す!?」
親父さんは元々宮城支部で働いていたが、おばさんの病気の件もあって、東京支部に移動させてもらっていたようで、また宮城に戻らなくてはいけなくなったと聞いた。
“お前だけこっちに残れよ。”
そう言いたかったけど、ひろかがお父さんを一人に出来ないと言うから、それ以上何も言えなかった。
「それじゃぁ・・・ね」
車にはすぐに使う日用品などがたくさん積まれて、運転席には親父さんが座っていた。
「ひろか、お父さんちょっとこの先のコンビニに行って飲み物買ってるから、クロくんとお別れしてからコンビニ来なさい」
親父さんが俺たちに気を使って車を発進させた。
俺は車が角を曲がったのを確認して、ひろかを抱きしめた。
「向こうは寒いから、ゴロゴロして豚になるなよ?」
「・・・ふふふ。うん」
「寂しくなるな、お前がいないと」
「・・・うん」
「お前さ、こっちの大学受けろ!」
「・・・うん」
「そうすれば、離れるのは1年だけだ」
「・・・うん」
「ひろか・・・」
“好きだ・・・”
この言葉が出かけたけど、グッと飲み込んだ。
「ひろか、毎日連絡すっから」
「・・・うん」
俺はひろかの顔を引き上げて両親指で涙を拭った。
「それ以上泣くと、ブスになるぞ」
「・・・うん」
ひろかは最後に少し笑った。
俺たちは小さな約束をいくつか交わして別れた。
約束が多ければ多いほど、俺たちの絆が強くなる様な気がした。