第43章 【澤村 大地】ヒーロー ~最後の文化祭~
澤村side
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夏休みが終わり、学校で佐藤に会う。
やっぱり、合宿中に見た佐藤ではなく、前までの彼女に戻っていた。
“佐藤もあんな風に笑うんだな”
そんなことはもちろん言わなかった。
なんか、負けた気がするから。
それでも日に日に佐藤は色んな表情を見せてくれるようになった。
「…そういえば、澤村くんってどこの大学目指してるの?」
「第一希望はN大で、次がR大かな」
「えっ!?私もN大…」
俺たちは今さら…と笑いあった。
「頑張って受かろうな」
「・・・うん!」
それからほぼ毎日のように、俺たちは図書館で一緒に勉強をした。
「そろそろ帰るか?」
俺たちが図書館を出ると、星がきれいに出ていた。
佐藤は立ち止って夜空を見つめていた。
その横顔があまりにもキレイで、俺は佐藤から目を離せなくなった。
“好きだ”
その言葉が出かけたけど、俺はその言葉を飲み込んだ。
きっとこの想いは伝わることがないから。
彼女の中にまだ俺はいない。