第42章 【澤村 大地】ヒーロー ~夏合宿~
「猫又先生!お久しぶりです。遅れてすいません」
「おぉ、佐藤くん!わざわざすまんね」
夏休み、私は森然高校へ来ていた。
私は転入前、音駒高校で従兄妹の研磨が所属しているバレー部の臨時マネージャーをしていた。毎年合宿時期のみ参加させてもらっている。
母のことや家のこともあって、バレーをすることは出来なくなったけど、こうやって短期間マネージャーとしてでもバレーに携われるのはすごく幸せだった。
夏休み前にクロから合宿に参加しないかと連絡が来て、父に話すと研磨の叔母さんに頼んで少し居候させてもらえることになった。新幹線の関係で合宿1日目の夜に到着をした。
「ひろか~!ちゃんと向こうでやってるか?」
私は荷物を置いて、研磨達の元へ向かった。
クロが私の頭をくしゃくしゃにする。そうしたら研磨や夜久ちゃんが止めてくれる。
山本くんは相変わらず照れて真っ赤になってる。
この中にいるとすごく落ちつく。久しぶりに笑って顔の筋肉が痛くなった。
「あれ?佐藤さん?なんでここにいるの?」
声がする方を見ると、澤村くん達がそこにいた。
まさか、澤村くんが言っていた遠征合宿が梟谷グループだとは思わなかった。
「ナイスキー!」
研磨のトス、クロのブロック、山本くんのスパイク、夜久ちゃんのレシーブ…1年生もすごく面白い子達がそろっていた。やっぱりバレーを見るのはすごく楽しい。
みんな点が決まると私の方を見て、Vサインをくれる。それを見て、猫又先生が笑う。
コーチには集中しろって怒られてるけど。
「なぁなぁ、ひろか!山本のカバンにこれ入れようぜ?」
クロがまた山本くんをからかおうと虫のおもちゃを持ってきた。
私は、研磨をたたき起こして山本くんのカバンにおもちゃを仕込んで3人で押し入れの中で山本くんの反応を見る。
「うっわぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「山本、うるせー!!」
「「「アハハハハハ」」」
私はお腹を抱えて笑った。
毎日が楽しかった。やっぱりここに戻りたいって思った。合宿が終わりに近づくたびにその思いが強くなっていくんだ。