第41章 【澤村 大地】ヒーロー ~転校生~
「・・・よっ!」
今日も俺は図書館に寄った。
佐藤はまたペコッと頭を下げて、勉強に戻る。
俺はいつものように、佐藤の座っているテーブルの端に腰掛けた。
パラパラパラ…
春風が吹いて机の上の参考書が勝手にめくれた。
プリント用紙が飛ばされそうになって、バンっと用紙を机に押し付けた。
「・・・窓、閉める?」
初めて佐藤から話しかけられた。
「あっ…あぁ、悪いな」
彼女はゆっくり席を立って、図書館の窓を閉めに行った。
風に吹かれて乱れる長い髪を押えながら重たい窓に手をかけていた。
しばらく経っても風が収まらないので、ふと顔を上げるとまだ佐藤は窓の傍にいた。
「・・・ふっ。大丈夫か?」
俺は佐藤の掴んでいた窓の取っ手を掴んで一気に閉めた。
風が強くて、なかなか窓が閉まらなかったようだ。
「あっ…ありがとう…」
彼女の顔が少し赤くなるのがわかった。
始めて見る彼女の照れた顔に心臓がドクンといった。
「いえいえ」
俺たちはまた机に戻り、勉強を始めた。
「なぁ…佐藤はさ、何でいつも一人でいるんだ?」
俺は一番聞きたかった事を参考書から目を逸らさずに聞いた。
またそっけない返事が返ってくると思ったけど、今日はいつもより佐藤との距離が近いと感じたから。
「…私、大学で東京に戻るつもりだし、仲良くなってもまた別れるの辛くなるだけだから…」
俺はハッとした。
引越した経験がないからわからないけど、友達と別れて全然知らない土地に来るのってすごく辛いことなんだろう。そして、その言葉を聞いて、人見知りだったり一匹狼タイプではないんだ。むしろ逆で、友達を大切にするからこそ、1年で別れることになる相手に深く関わろうとしないんだと分かった。
「じゃぁさ、俺と友達にならないか?俺、東京の大学行く予定だしな!それならいいだろ?それに、今度弁当なしの日にまたパン買ってきてやるからさ?」
彼女は驚いた顔をしていたけど、少し経ってふふふ。と笑った。
「うん。よろしく、澤村くん」
微笑んだ佐藤はとっても可愛かった。