第41章 【澤村 大地】ヒーロー ~転校生~
ひろかside
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“ひろか~!”
懐かしい友人達が夢に出てきた。
すごく居心地が良くて、気持ちが安らいだ。
「・・・やばい!寝坊した!!」
私はいつもより30分も遅く起きてしまった。
「お父さん起きて!!遅刻する!…今日お弁当なしで!!」
私は父と一緒に慌てて家を出た。
キーンコーンカーンコーン
昼休み。
いつもは教室の自分の席でお弁当を食べるのだけど、今日はお弁当がない。
そういえば購買ってどこなんだろう。でも、それを聞く人もいない。
今日はお昼抜きか…。そう思っていた。
「・・・佐藤?どうかしたのか?」
澤村くんが私に声をかけてきた。彼に聞けばよかったんだけど、私は彼から目線をそらした。
「・・・大丈夫」
私がそう答えると、澤村くんは、そっか…と去って行った。
仕方がないので、私は参考書を開いた。別に読み込んでいるわけではない。勉強している風にしていたら、誰からも声はかけられないだろうと思ったから。
ガサッ
私がふと目線をあげると、澤村くんが立っていた。
「これ、余ったからやるよ」
澤村くんはそう言って、私の机の上にパンを置いて去って行った。
「えっ…ちょっ…と」
澤村くんはそのまま、男子集団の中に入って楽しそうに話をしていた。
私は机の上にあるパンを口に含んだ。
「・・・おいしい」
本当はお礼を言いたかったけど、結局それから彼と会話することはなかった。
「あっ・・・佐藤?」
私が図書館で勉強をしていると、澤村くんが私の座っていたテーブルの端に座って勉強を始めた。
彼はいつもスポーツバックを持っているから、きっと何かの運動部に入っているんだと思う。部活と勉強の両立か。私がふと彼の方に目をやると、うとうとしながら必死で眠気と戦っていた。
そんな彼を見て、ちょっと口元が緩んでしまう。
「・・・はぁ」
私は問題を解き終えて、ひと段落した所で大きく伸びをした。
ふと彼を見る。すると澤村くんは机に伏せて眠っていた。
私は自分が使っていたひざ掛けを彼の肩にかけて図書館を出た。