第38章 【東峰 旭】もう一度だけ・・・
ひろかと付き合ったのは高校3年の秋。
ひろかは優秀だったが、俺といるようになって一度成績の順位を落とした。そのことが原因ですれ違ったりもした。
けど、彼女は周りに何も言われないようにと、必死で勉強し、AO入試で大学合格を決めた。
就職組の俺と、すでに受験を終わらせたひろかは最後の高校生活を満喫した。みんなが必死に勉強している時間も俺たちは2人の思い出をたくさん作った。
10月初めての舌が絡み合うキス。
11月両親が家を留守にした日の初めての夜。
12月クリスマスには初めてペアリングを買った。
1月お正月は初めて家族以外と過ごした。
2月初めての本命チョコレート。
3月大地やスガに茶化されながら初めて選んだお返し。
4月になれば、ひろかは宮城を離れて東京に行ってしまう。そんな事を無理やり忘れようとするかのように、俺たちはずっと一緒にいた。
でも、月日が経つのは早いもので、3月下旬にひろかは東京に行ってしまった。
毎日メールや電話をした。
それでも、ひろかが話す言葉やイントネーションに違和感を感じるようになった。
この時代なので、元々そんなに東北なまりがあったわけじゃない。
でも、やっぱりふとした時のイントネーションの違いが、俺たちの間に出来た距離を表しているように感じた。