第1章 【孤爪研磨】特権
けーんま!
屈託のない笑顔の彼女。
あれはまだ中学の時の制服だ。
夢か…
いつから、俺たちは変わっていったんだろう。
ピピピピ…
カーテンの隙間から指す日差しがとても眩しくて、布団を頭の上まで被せて光を遮る。
携帯の目覚ましアラームを消して10分経つ頃に、聞き慣れた足音がする。
「けーんまっ!早く起きてー!遅刻するよー!!」
そう言って、部屋のドアを開けてる彼女。
「…もう!」
布団の中で丸くなるおれの姿を見て、仕方ないな。と言わんばかりにそっとベッドに近づいて、ゆっくり布団をはがす。
「研磨?早く起きないとおいて行くよー」
本当は10分前には起きていたけど、彼女に起こされてようやく起きた様な顔で出迎える。
「おはよう、研磨。」
そう微笑む彼女はおれの頭をなでる。
子供扱いされてるみたいで嫌だけど、彼女の手はなんだかホッとするんだ。
支度を終えて玄関を出ると、そこにはクロが待っている。
3人で登校するのが日課だった。
小学校の頃からずっとだ。
「おっせーぞ、研磨!」
クロがいつものように笑いかけ先に歩き出す。
「クロー、今日も寝癖すごいよ?」
「うっせーよ」
クロの寝癖を直してあげようとする彼女の手を冗談ぽく払いのけるクロと
そんなクロに笑いかけている彼女の後ろ姿を見ながら歩く。
「けーんま?早くー!」
おれが少し置いていかれると、必ず彼女が振り返っておれを急かすんだ。