第31章 【日向 翔陽】犬男子×猫女子
「戻りましたー!」
私達が体育館の扉をあけると、すでに集まっていた部員達が駆け寄ってきた。
「ひろか、悪かったな」
「いちお、仕事だし…」
拗ねる私に、すまん、すまん。と笑いながら、私の頭を撫でるのは澤村キャプテン。私の幼馴染。
「日向のお守り役お疲れ様!」
菅原さんが、そう言って私を労う。
お守り役というワードに他の部員達から笑いが起きる。
その笑いに翔陽は怒りを表す。
「だって、クジで買い出しが日向になった時点で、ひろかちゃんが付き添うこと決定してたよな?みんなの頭の中で」
「だな。日向扱い切れるのひろかちゃんだけだし」
そんな勝手な理由で、私は買い出し係になったのだ。
まぁ、マネージャーの仕事と言われれば文句は言えない。
「ひろかは翔陽の姉ちゃんって感じだしな!」
西谷さんがそう言うと、翔陽は私の前に仁王立ちした。
「ひろかは姉ちゃんじゃなくて彼女です!!」
ドヤ顔で言う翔陽に他の部員達が一斉に口を開く。
「「俺たちのマネージャーだ!」」
「ぷぷ。彼氏なのに、弟みたいに見られるって僕なら耐えられない」
月島の皮肉に更に翔陽の怒りが増して行く。
「翔陽、そろそろ着替えてアップしないと、みんなに置いていかれるよ?」
私の言葉を聞いて、それはヤダ!と部室へ走り出した翔陽。私はやれやれと息を吐く。
「皆さん、あまりイジメないでくださいね?」
私がそう言うと、わかってるって返ってくるけど、絶対分かってないよな、この人達。
私も自分の着替えのために校内に向かう。途中の部室から翔陽が出てきた。
「なぁ…ひろかは俺の彼女だよな?」
いつもあんなに元気なのに、今はちょっぴり凹んでるご様子。何度も聞くから、私は笑ってしまう。
不貞腐れて翔陽は体育館に行く。
「翔陽!」
私は振り返った彼にキスをした。
「部活頑張って!」
翔陽はさっきの不貞腐れ顔から、一気に表情が変わる。
俺、部活頑張る!ってやる気満々に体育館へ行く。
本当、単純。
でも、1してあげて10喜ばれる。
翔陽はそういう人。
翔陽はひろかが幸せなら、俺も幸せ!って言うけど、私を幸せにしているのは確実に翔陽なんだ。
「好きだよ、翔陽」
私は今日も愛されている実感を噛みしめる。
TheEnd