第26章 【月島 蛍】バカじゃないの?
ザーザー
夏休み。
私は蛍と海に来ていた。
蛍は私の誘いをずっと断っていたけど、
なんだかんだ言って、結局は一緒に来てくれた。
「ねぇねぇ、蛍!見て見て?可愛い?」
私はこの日のために新調した水着を披露した。
「・・・ひろか、太ったんじゃない?」
「もぅ!これでもダイエット成功したんだからね!」
蛍はいつもの嫌味を言ってくるけど、そんなの関係ない!
だって、今日は海!夏の海は気持ちも開放的になる。
今日くらいは、蛍も少しはラブラブしてくれるはず!
そんな期待をしていたのだ。
「はぁ…疲れた~」
私たちは休憩がてら海の家に行った。
店内はかなり混雑していたので、私が席を確保して、蛍がレジに並ぶことにした。
「あっ、席あった!」
私は空いた席に座って、レジに並ぶ蛍を見た。
長身の蛍はとても混雑している店内でも目立っていた。
周りより頭一個抜けた身長と、白い肌。
すらっとしている細身の体系なのに、しっかりと筋肉がついている。
改めて見ると、なんだかドキドキしてしまう。
「ねぇねぇ!あの子カッコ良くない?」
「メガネの?確かに~!声かけてみる!?」
少し離れた席の女性2人組が蛍を見てそんな事言っていた。
「でもさ、彼女とかいるんじゃない?」
「いやいや、もし彼女とかいても奪っちゃえばいいんだよ」
ガタンっ
私はそんな女性2人組に見せつける様にレジに並ぶ蛍の所に行って、腕にしがみついた。
「えっ・・・何?」
私がムスッとして蛍を見ると、呆れ顔で溜息をついた。
「・・・ねぇ、離れてくれない?邪魔」
蛍は私の腕を振り払って、提供された食事を運んだ。
「ぷぷ、何あれ。かわいそうー」
「あれじゃない?彼女面してるけど、彼は全然その気ない的な?アハハ」
悔しい・・・。
蛍のバカ。
蛍の背中を睨んでいると、急に振り返った蛍が口を開いた。
「ねぇ、席どこ?」
「・・・あっ!」
私が確保していた席はすでに違う人達が座っていた。
「・・・本当、何やってんの。バカなんじゃないの?」
蛍は呆れた顔で私を見ていた。
結局、少し待って空いた席で食事を取ったけど、
その頃には食事は冷め切っていた。