第22章 【及川 徹】ふざけたあいつ
パラっ
私は教室で最近ハマっている小説を読んでいる。
それなのに、いつも決まってあいつが邪魔をしてくる。
「佐藤ちゃーーーん」
私のそばに寄ってきて、ヘラヘラしているこの男。
及川徹。男子バレー部の主将らしい。
周りの女子達はキャーキャー言っている。
「こいつのどこがいいわけ?」
私は全然理解できなかった。
放課後、私は図書委員の仕事で図書室の受付の仕事をしていた。
図書委員の仕事は、割と好きだった。
あまり忙しくないので、その間は自分の好きな本を読める。
シーンとした図書室での読書は集中出来て好き。
当番が終わる時間を過ぎても
私は図書室にいることも少なくなかった。
「あっ、佐藤ちゃんじゃん!」
今日は当番の日。
聞きなれたあいつの声が聞こえた。
「佐藤ちゃんは図書委員か~」
そう言って、私が座っていた椅子の横に
あの男は座った。
「ねぇ、いっつも何読んでんのー?」
「・・・」
私が無視をしても、ずっと話かけてくる。
「ミステリーだよ、ミステリー!」
私はつい大きな声を出してしまった。
図書室にいた生徒の視線を一気に集めてしまった。
「佐藤ちゃん、シーだよ、シー!
図書室では静かにね?」
そう言って彼は人差し指を立てた。
「元はと言えば、そっちが悪いんじゃ…」
そう思ってあいつを見たけど、
私はその言葉を一度飲み込んだ。
「・・・部活はいいの?」
私が話題を変え、問いかけると
びっくりしたようにこっちを見た。
「佐藤ちゃん、俺が部活やってること知ってたの?」
あんなに女子達が騒いでるのに、
知らない方がおかしい。
そう思いながらも、私は黙った。
「実はね、ちょっとケガしちゃって、
練習出られないんだよね」
ハハハ…と笑う彼はちょっと悲しそうだった。
「体育館行くと、俺もバレーしたくなっちゃうからさ…。
もう少しここにいてもいい?」
いつもヘラヘラしている彼の
寂しそうな顔を見て、私はドキっとしてしまった。
「べっ、別に、あんたがここにいるのは構わないけど…」
私がそう言うと彼はありがとう。と笑った。