第1章 帰る場所は
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「残念ながら知らないわ。確かに愛しの銀さんと四六時中、一緒にいたいのは山々よ?けどね、私の設定忘れないでちょうだい。始末屋よ?始末屋さっちゃんよ?忙しいに決まってるじゃない!日々、悪と戦う強くて美しい正義の味方なの!いつもいつもストーキングばかりしてるとでも思った?侮らないでちょうだい、付き纏う時間なんて限られてる物よ?生きる為にはある程度は犠牲が付き物なの。それが出来る私は『出来る女』なの。そう、出来る。出来る事なら付き纏いたいに決まってるじゃないのオオォォォッ!!!同じ屋根の下で暮らしてるからって調子に乗るんじゃないわよ!!私なんてね!銀さんと同じ布団で寝た事があるのよ?結婚寸前まで行った仲なのよ?しかも最も相性の良いドSとドMよっ!私なんて、ネバネバに掻き混ぜた納豆まで投げられた事があるんだから!貴方そんな事された事ある?ある分けないわよね!何故ならあれはドSな銀さんが私『だけ』に向ける愛情表現なんですもの!!分かるでしょう?貴女が私に敵うはずないじゃない。だいたい貴女なんてね…」
「…猿飛さん、それ、電柱ですよ?…これ、メガネです。」
話しかけた良いが、どうやら麗に振り向く衝動でメガネを落としたらしい。麗の質問を聞き届ければ、彼女は勢い良く電柱に長々と語りかけた。その様子からして、恋人である麗に相当鬱憤が溜まっているらしい。失礼に思いながらも麗は終わりそうにも無いマシンガントークに割って入った。
あら、ありがとう、とメガネを受け取ったあやめは、今度こそ麗を視野に入れて話しかけた。