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帰る場所は(銀魂:銀時夢)

第1章 帰る場所は


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 この頃のかぶき町は、野蛮で狡賢い野良猫で溢れていた。愛らしいその容姿と仕草に反し、猫達は町を好き勝手徘徊しては、あちらこちらと人間に被害を及ぼす。時には店の魚や肉を盗み、またある時にはゴミを荒らす。いつの間にか繁殖もしたりしていて、余計に被害が大きくなる。数も多いだけに、歩く道で見かける糞の量も半端じゃない。中には腹を下しているのか、異臭が一際強く、ドロドロとしたものもある。とても見れたものじゃない。何故、外に出るだけで不快な思いをしなければならないのか。そうして実害が増え、人々にとって「まあ、仕方ないか」で済む次元ではなくなってしまった。

 そんな事もあり、町内会の者達は団結して猫を狩る事を決める。狩ると言っても命を奪うのではなく、捕らえた雄猫に去勢手術を施し、また野良の世界に帰すという計画だ。ゼロとまではいかないものの、少しでも野良猫の繁殖を防げればそれで良い。被害はあるが、猫達も同じかぶき町に住まう仲間だ。必要の無い殺生は行いたくない。小さな命が、可愛くない訳がないのだ。

 だが一匹だけ例外がいた。老体ではあるものの、巨体で強く、何より足の速い猫が居る。町中で噂されるその猫は、野良の中で最も被害を及ぼしていると言う。猫達のボスとも言われるほど力を持ち、凶暴な野犬さえも蹴散らしてしまうほどの実力だ。真か嘘かは定かではないが、人間も襲った事があるといわれている。その凶暴性を表すかのように、戦いの中で失ったのか、猫の両耳は食い千切られていた。その特徴から、昔話の僧にちなんで猫の名前はホウイチと付けられる。

 人間さえも巧みに躱すその猫を捕まえ欲しいと、万事屋坂田銀時の元に依頼が入って来た。久々の仕事、しかも聞こえは簡単な内容だ。間も置く事なく、銀時は依頼を引き受けた。いつものように、麗に「いってきます」と告げ、新八と神楽を引き連れて町へ出かける。何の事のない日常。依頼内容を聞いた麗も、危険の無い仕事に安心して笑顔で三人を見送った。

 だがその日、銀時は戻ってこなかった。
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