第1章 帰る場所は
*****
「ごめんね、変な所を見せちゃって。付き合ってくれてありがとう。」
目を赤くした麗は、長いあいだ側にいてくれた猫に礼を言う。何処までも不思議な猫だ。銀時を思い出させるだけでなく、辛い時まで慰めるようにその場にいてくれた。
「さあ、お行き。貴方にも帰る場所があるでしょう?」
だが、猫は野良猫だ。きっと麗の元に辿り着いたのも偶然なのだろう。ならば猫は野良の世界に返さなければならない。少し寂しく思いながらも、麗は猫に別れを諭す。
ニャー
猫もその言葉が理解できたのだろうか。最後の挨拶のつもりなのか、猫は麗の指に甘噛みをし、返事をするように鳴いて万事屋から去って行った。