第1章 プロローグ
幼い頃はよく一緒に遊んでいた。幼い頃の私はよく男の子にからかわれたりいじめられたりしていた。今にして思えば好意の裏返しだったのだろう。だが当時の私にはそれがわからなかった。だから唯一意地悪をしない、それどころか庇ってくれる彼の後ろに隠れてばかりいた。彼だけは特別だったのだ。私の初恋だったのかもしれない。
成長してお互いの交友関係が広がると、少しずつ距離が生まれた。だがその頃にはもう家同士の話し合いで婚約者に決まっていた。レールは敷かれていたのだ。
そして私は気付いていた。“彼"の違和感に。おそらくは彼の家族ですら気付いていなかったであろう変化。薄々ではあったが私はそれに気付いていた。だが何もしなかった。できなかった。もしあの時何かしていたら「今」は変わっていたのだろうか。「彼」に会うことも無かったのだろうか。