第2章 再会
仕度を整えて玄関へ向かうと、荻野さんが車を用意してくれていた。観光客でごった返す公共交通機関を使わずに済むのは正直ありがたいのでご厚意に甘えることにした。荻野さんにお礼を言って車に乗り込む。多少混雑していたが、余裕を持って駅に着いた。
家族へのお土産を選びながら時間を潰す。と、携帯からメールの着信音が鳴る。見れば「彼」からだった。練習中だというのに何をしているのだろう。半ば呆れながら無事駅に着いたことと、車を用意してくれたことに対する返礼を手早く返信する。間を置かずにまた「彼」から返信があった。くれぐれも気をつけて帰るようにと念を押す内容に、保護者でもあるまいにと苦笑する。「彼」にして見れば保護者気分なのだろう。皮肉を込めて練習頑張ってという内容の返信をして電源を切る。これでしばらくは静かに過ごせるだろう。
発車時刻が近づいてきたので改札へと向かいながら、やっと解放されたことを実感する。長い三日間だった。私は安堵の溜息をもらす。ようやく日常へと戻れることを喜びながら、これから訪れるであろうそう遠くない未来を思うと気が重くなる。高校を卒業すれば、大学へ進学するにしろ縁談は進み「彼」と暮らすことになるのだ。私に残された自由は後3年弱。大切に使わなければ。
ゆっくりとすべり込んできた新幹線に乗り込み、窓から外を眺める。そこには迷子のように一つだけ雲を浮かべた青い空が広がっていた。