第1章 温泉の街で出会った少女
「いたたた……」
香織は転がった時にあちこちぶつけて、痛むところをさする。すると、自分の体の下に少し柔らかい感覚があって、急いで起き上がる。
「す、すみません……お怪我はありませんか?」
彼女は急いで見知らぬ人の上から横へと退いて、自分の下敷きになって守ってくれた相手を見た。その人も香織が退くと、地面に手をついて上体を起こす。
「大丈夫だよ。君の方こそ、大丈夫? 怪我はしてない?」
白い髪の毛の男の子はにこりと何事もなかったかのように笑った。少女を助けたのは吹雪だった。彼は自分が危ないのもおかまいなしに、持ち前のスピードを活かして、反対側の歩道へと移動し、少女を助けたのだ。
「か、香織ちゃん!」
そこへ、トラックの運転手が香織の名前を叫び、血相を変えてトラックから飛び出して来た。
「だ、だだだ大丈夫!? 怪我はしてない!? どこも痛くないか!?」
焦った様子で角度を変えて見ながら、香織の身体を確認する。
「大丈夫よ、おじさん。おじさんこそ、大丈夫? 怪我してない?」
少女は服についた砂や石を払って、スクッと立ち上がった。
「ああ、俺は平気だ! それより……本当に怪我、してないよな? 大丈夫だよな!?」