第2章 若女将は中学生
そうこうしている間に、雷門中サッカー部一同は温泉から出て、自分たちに用意された大広間に戻って来た。床は畳で造りは和室になっている。
「あー! 疲れたー!」
円堂は部屋のほぼ真ん中の辺りで、大の字になって寝転ぶ。
「あ! 円堂、ズルいぞ!」
「俺も!」
そう言って、メンバーたちは円堂を真似て次々と横になる。
「はいはい、みんな! もうすぐ料理も運ばれてくるから、席に座ってね」
「はーい!」
秋の言葉でみんな、大人しく席についた。
「失礼します」
それとほぼ同時に、襖の外から声が聞こえた。そして、扉が開き、1人の少女が部屋の中へ入って来た。少女は正座をして頭を下げる。
「この度は、『ホテル 春の湯』へようこそいらっしゃいました。私は若女将の瀬戸内香織と申します。何かご用件がございましたら、フロントへお申し付けくださいませ」
少女はそこまで言うと、顔を上げてにこりと微笑んだ。
それと同時に、雷門サッカー部の1年生たちが顔を赤くした。
「か、可愛いでヤンス」
「う、うん」
小声でそんなやりとりをしていることはつゆ知らず、香織は言葉を続けた。
「今から、お料理を運ばせていただきます。このホテルの料理長が腕によりをかけて作った料理です。ごゆっくりお召し上がりくださいませ」