第2章 若女将は中学生
「本日は『ホテル 春の湯』をご利用いただき、誠にありがとうございます。代表者の方は……」
「よ!」
少女が挨拶をしていると、円堂が声をかけた。
「……」
少女は目をパチクリさせた。
「ちょ、ちょっと! 円堂くん! 何してるの!?」
「うん? 何って?」
「何でホテルの人にそんな風に声をかけてるのよ!」
秋は円堂を怒った。ーー無理もない。いきなりホテルの人にタメ口で声をかけるなんて、どう考えてもおかしい。
「だって、この子、さっき吹雪が助けた子だから……」
「え!?」
「な!」
円堂は香織に笑顔で言った。
「……はい。先程はどうもありがとうございました」
香織は笑顔を浮かべて、深々とお辞儀をした。
「それでは、代表者の方は少しご用件がございますので、フロントの方へお越しいただいてもよろしいでしょうか?」
「はい」
夏未はすっと前へ出て、香織の後についてフロントへ向かった。
「……なんか……冷たいな〜」
円堂は口を尖らせて、つまらなさそうな顔をした。
「仕方ないよ、キャプテン」
後ろから吹雪が声をかけた。
「彼女は今、仕事中なんだ。いくら知り合いで命の恩人だとしても、そんな馴れ馴れしくできないよ」
「うーん……それもそうだな」
円堂はニカッと笑った。