第3章 *夏風邪[沖田総悟]
ピピピピ
体温計の無機質な音が部屋に響く。
「38.7℃…風邪だな」
はぁ、と出るため息さえも熱い。
朦朧とする意識で、とりあえず近藤さんが引いてくれた布団に潜り込んだ。
…そう。近藤さん。
なぜゴリラに布団を引かせたのか。
一生の不覚…ではない、わたしのせいではない。
ひとえに総悟のおかげだ。
あの憎たらしいほど端正な顔を思い浮かべる。
「はぁ…」
一応、彼氏。…のはず。
少なくとも
「オレの女になりなせェ、メス豚」
なんて、彼なりの告白だと信じていた。
素直に嬉しかった。好きだったから。
でも。
「好き」なんて歯が浮くような台詞、言われたことがない。
付き合って半年、手すら繋いだことがない。
酷くないですか?