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出会えた奇跡

第2章 存在理由


あれから、私はお屋敷の中を探検して自分なりに覚えてきたつもりだ
だが、屋敷内が広すぎるのもあって慣れるのには時間が掛かった
しかし、仕事の一部である為覚えなくてはならない
そしてその日の夜は部屋にいた
私は自分で作った屋敷の図面と睨めっこしていると、あの優しいノックの響きが聞こえてきた
これはセバスチャンさんだとすぐに分かるようになっていた

「はい!今、開けますね!」

はりきってドアの前まで来れば、ドアノブを捻りドアを開ける
その顔はいつもと変わらない表情で私を迎えてくれる
しかし今日は何かが違う、私にとある衣装を渡してくれたのだった
それは今までに来たこともないようなレースのドレスである
吃驚しすぎて、それを落としそうになった

「せ、セバスチャンさん!?一体これは……」

パチンと片目を閉じて私を見下ろしている
とても綺麗な姿に世の女性はきっと釘づけなのだろうなと思っていると
落としそうになったドレスを両手で掴み支えてくれた
いつでも助けられているような気がする
全てが真新しいことばかりで戸惑っていたとしても優しく教えてくれる

「これは、坊ちゃんから貴女様へのプレゼントだそうです」

「シエル様から!?」

この白い純白のドレスを見て思った
まるで広大な青い海を見た時のように澄んでいると
あの瞳を思い出す
どうしても脳裏から離れてくれなかったのだ
セバスチャンさんから手渡されるそれを
ぎゅっと力強く握りしめて自分の胸に押し当てた

「是非、それをお召しになって今宵のパーティーにご参加ください」

「パーティー…?」

悪魔は笑う
それは不適に笑うものなのか何なのか
優美に笑い、注がれる甘い蜜
それを飲んでしまっている私
幸せだ、幸せだと言いながら抜け出せなくなってしまいそう
その紅色の瞳は語る

「ご安心を…少しお出かけするだけですので。それに貴女が必要なのです」

「私が?」

するとシエル様が部屋に入って来た
その装いは出かけるような黒い服を纏っている
そして私の前に来て笑うのだ
人懐っこい笑みではなく訳がありそうな笑みで

「シィラ…初の仕事だ。行くぞ」

「え、あ、…はい!」

そうして私は共に行くことになった
白い薔薇が飾られていたドレスが風に揺れた
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