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靴屋な赤葦と出会うはなし

第1章 靴がくれた出会い


「あ、お会計・・・・」
「いらないですよ。俺が払っておくんで」
「ど、どういう事ですか?」
「弁償すると言ったでしょう? ブーツの方がいいなら、今度ご来店頂いた時に」
「嫌です! 私、自分の靴は自分で買います!」
「それは、絶対ですか?」
「絶対です! 自分で買うからいいんじゃないですか、こういうものは!」
 はあ、と見るからに溜め息を吐かれて、は苛立ちを隠さなかった。彼の、真面目そうなところや気遣いの深さに気を許し始めていただけに裏切られた気がした。彼はカウンターで何か書き物をしていて、終えるとレジを打ち始めた。
「・・・・お会計、12,500円です」
「え、はい!」
 キャッシュトレーに丁度の金額を乗せて、交換でレシートを受け取った。多分、値引きもされてなくて、ちゃんと値札通りの額だ。
「これ、ここのポイントカードと俺の名刺です」
「ポイントカードと名刺?」
「はい。ちゃんと、捻挫は病院に行ってください。行ったら連絡をください、治療費も払います。これは譲りませんから」
 余りの真剣な目と声に、説得の余地はなさそうで、つい二つの紙を受け取ってしまう。名刺には“ふくろうのくつ 副店長 赤葦京治”の文字、裏には携帯のものらしい電話番号とメールアドレスがあった。スタンプカードは二つ折りにされていて、アース色で店のロゴと梟のイラストが添えられている。
「ポイントカードの裏面にはここの住所と地図があるので、良かったら・・・・」
 そこまで言って、彼・赤葦はハッとまた眉を顰めた。
「すみません、転ばせておいて何言ってるんだって思われますよね」
「いいえ、また来ます。折角、素敵な靴屋を見つけたんですから」
 が笑ってみせると、赤葦も釣られて口元を綻ばせた。

 後日、捻挫を完治させ嬉しげに店を訪れるを、赤葦が出迎えた。
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