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靴屋な赤葦と出会うはなし

第1章 靴がくれた出会い


「私、取り敢えずでも一足買わないと帰れないです・・・・」
 足元を見る。素足に包帯を巻いた左足とブーツを履いたままの右足。片割れはヒールが折れてそのままだから修理に出すにしても当分の間は履けない。 折角和やかに会話が出来る程度になったのに、また余計な事を言ってしまった。長身の彼が眉根を顰めていると威圧感が出て、なかなか迫力がある。
「・・・・ヒールがないものならいいですよ」
「ほんとう!?」
 お許しが出た。彼の腕から離れ、は途端に目を付けていたらしい、水色のフラットシューズに腕を伸ばした。が、手には収まらず棚から落ちていく。は両腕で落ちてきたフラットシューズを受け止めて、ほっと胸を撫で下ろした。のも束の間、の体は傾き、ガツリと鈍い音を立てて棚と頭が衝突した。額に棚の角が刺さる。
「~~~っ!」
「大丈夫ですか!?」
 涙目のの額を、彼が前髪を掻き分けて怪我の状態を見る。赤くなった額に切り傷や擦り傷が見当たらない事を確認すると、さっきまで捻挫した足首に当てていた保冷剤を額に当てた。
「ありがとうございます」
「いえ。それより、言えばちゃんと取りますから。無理はしないでください」
「・・・・ごめんなさい」
 素直に謝るに苦笑して彼はフラットシューズの試着を勧めた。シューズに足を入れて、目を爛々と輝かせ、何度も鏡の中の足元を見つめた。水色のそれがキラキラ光って見えた。
「サイズはどうですか?」
「ピッタリみたいなの、嬉しい! これ、買います!」
「履いて帰られますか?」
「履いて帰りたい!」
 彼はレジカウンターから鋏を持ってきて、フラットシューズに付けられた値札を取り外して、の足元へ返した。シューズを履いて、バッグから取り出した財布を持ってレジカウンターで会計を待った。店の奥からシューズが入っていただろう箱を持ってカウンターに戻って来た彼はきょとん、とした顔でを見た。
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