第2章 あの日から
やっとのことで言葉に表したのは、素朴な疑問だった。
「なんで?」
「人を好きになるのに、理由がいるの?」
「うっ・・・」
間髪入れずにまともと思われる答えを返され、言葉に詰まる。
「ミモザは考えたことなかったの?俺とミモザが恋人同士になるってこと」
一呼吸おいて発言する。
「そんな大それたこと考えたりしません。私とイルミさんじゃ、つりあわないですよ。イルミさんはこの家の長男だし・・・私はアルバイトすらしてないほぼニートだし」
「うちを継ぐのはキルだからね。俺は割と自由にしていいんだよ。それはそうと、ミモザってば、働いてないの気にしてたんだ?確かに、働かざるもの食うべからずだ よね。ねえ、ミモザ、良かったら俺に雇われない?」
「え?」
「君の念能力を、俺のために使ってほしいんだ。報酬は払うからさ」
「イルミさん、私の能力知ってたんですね。そっか、昔一緒に遊んだことがありますもんね」
「うん、君は小さい頃から念能力だけは人並み以上に発現してたからね。いい力だなって、思ってたんだよ。それで、仕事の件は引き受けてくれる?」
「え・・・と。家族みたいに思ってるイルミさんからお金をいただくのは悪い気がするから、無償でいいです。必要なときに、私を呼んでください」
「ミモザは欲がないなあ。まあ、そんなところも俺は好きなんだけど」
またしても好きという言葉を投げかけられ、私の頭は沸騰しそうになる。
「でも、お人好しもたいがいにしておかないと、痛い目みるよ。いいから、お金は受け取っておきなよ。俺が ミモザ名義の通帳作っておくからさ」
「・・・はい」
イルミさんを直視できずに、ほてる顔を下に向けていると、
「今後のことは、あせらないから。ミモザも俺とどうなりたいかはゆっくり考えてよ」
そう言って、イルミさんは私の手をゆっくり引いた。
「お茶に行こうか?」