第4章 出口
風にとばされそうになった帽子を、片手で抑える。
ゾルディック家を出て何度目かの初夏がやってきた。
私は遅ればせながら通信教育を修了し、今後の身の振り方を考えているところだ。
母を殺し、私を狙うという殺し屋は、現れていない。
真相はわからないが、そもそも、あれは嘘だったのかもしれない、と今は思う。
楽観的だ、とまた誰かから叱られそうな気もするが、殺し屋の影にびくびくしながら過ごすよりずっといいだろう。
イルミが私にしたことは、許されることではないだろう。
でも私は思う。
イルミにとっては、あれが精一杯の愛し方だったのではないかと。
イルミとのことを思い出すと、胸の奥が疼く。
見上げると、雲一つない青空が広がっていた。
もし、今度イルミに出会うことがあったら。
私を操作しないと約束するのなら。
私はどうするだろう。
とりとめのない夢想をする。
青空を、小さな鳥が飛んでいる。
野鳥には珍しく、目に鮮やかな黄金色だ。
どこかの鳥かごから逃げ出したのかもしれない。
おうちに戻りたい?
私は飛び去っていく小鳥の後ろ姿に、問いかけた。